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ムエタイ入門(18回)

    
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ムエタイ入門(18回)

前回は、ムエタイの選手にサウスポーが多い理由として、右利きであるにもかかわらず練習を重ねてサウスポーになる選手が半分以上いるのではないかという推論を挙げた。より正確に言うと、生まれつきのサウスポー(生まれつき利き手が左の選手)よりも利き手が右手であるのにサウスポーになった選手の方が多いのではないかという説である。

サウスポーの方がオーソドックスに比べて若干有利なことや、自分では利き手、利き足ともに右であると思っていたのにいざミットを蹴ってみたら利き足である筈の右足よりも左足の方が強く蹴れたという理由により、利き手が右であるにもかかわらず、左構えになったという選手は実際少なからずいる。

サッカーの経験者であれば、利き手と本当の利き足が必ずしも一致しないということを良く知っているのではないかと思う。利き手が右だからといって誰しも右のキックの方が蹴りやすいというわけではないし、逆に利き手が左だからといってどの選手も左のキックを得意としているわけではない。

ムエタイを始める子どもたちには、利き手が右で利き足も右という生粋のオーソドックスタイプ、利き手が右で利き足は左というタイプ、利き手が左で利き足も左という生粋のサウスポータイプ、利き手が左で利き足は右というタイプの4種類がいる。(例外的な先天的両利きタイプを含めると5種類。)中でも、利き手が右で利き足が左なら、蹴り、とりわけミドルキックを重視するムエタイではサウスポーになる可能性が高い。もちろん、生粋のオーソドックスタイプであるにもかかわらず、サウスポーの優位性を考慮して左構えに矯正する選手もいる。

こう考えると、利き手が右手であってもサウスポーになる選手が多いというのは、別段不思議な話ではないようにも思える。ただ、問題はその手の右利きサウスポーの割合だ。仮にタイにおける左利き(正確には利き手が左の人)の出現率が一般に云われているように10%程度であるとし、ムエタイにおけるサウスポー選手の割合が30%であるとするのなら、単純に考えて10%が生まれつきのサウスポーで、20%が矯正型のサウスポーということになる。

う~ん。本当だろうか。。。

過去それなりにたくさんのムエタイ選手にインタビューしてきた筆者の経験から言うと、トップクラスのサウスポー選手の大多数が生粋のサウスポーであり、ものを書いたり、箸を使ったりするときは左手を使い、ボールを蹴るときは左足を使うのだという選手が多かったように思う。最近惜しまれながらもアマチュアボクシングへ転向したセーンマニー・ソー・ティアンポーや「高速左ミドル」のチャーヤー(呼び名)を持つゴーンサック・シットブンミーなども生粋の左利きであると語っていた。逆に元々利き手、利き足は右だったけど、矯正してサウスポーになったとか、利き手は右だけど利き足は左だったのでサウスポーになったという選手は意外に少なかったと記憶しているのだが如何であろうか。

いずれにせよ、データがまだまだ少なすぎるので、今後サウスポースタイルの選手には片っぱしから生まれつき左利きなのかどうかを聞いてみようと思う。

~続く~

写真撮影:早田寛
『スーパーバンク・サックチャイチョート(赤)対サームエー・ガイヤーンハーダオジム(青)の一戦。2人ともトップクラスのサウスポー選手』129-1

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