5月20日HOOST CUP KINGS NAGOYA4志朗2度目の防衛戦
世の中には星の数ほどチャンピオンが存在する。その中でいかにして保持するチャンピオンベルトに価値を見出すかといえば、防衛期限を守り、挑戦者に相応しい相手と防衛戦を重ねることが必要になってくる。見渡してほしい。チャンピオンベルトを勝利者賞のトロフィ代わりに持つ選手がどれだけ多いことか。その点、年一度の頻度で防衛戦を行う志朗の姿勢は評価される。
今回、ISKAが指名した挑戦者はゴンザロ・デバル。奇しくも前述したロペスと同じスペイン生まれのムエタイ戦士だ。現在WPMF世界スーパーバンタム級王者の肩書を持つというので、現役王者同士のタイトルマッチということになる。
ムエタイを始めたのは8~9年前。きっかけは小さい頃から格闘技が好きだったからと切り出した。
「とくに忍者映画が好きでした。スポーツの中ではムエタイが楽しく、自分に合っていた。やっていくうちにこの競技はひじょうに美しい文化であることもわかりました」
2014年のプロデビュー戦こそ敗北を喫したが、それを糧にロペスは躍進した。「勝利を重ね、いまはテレビ放送もあるスペインのビッグイベントに出場しています」
2017年7月にはコンドイ・カエウサムリッツを判定で撃破し、WPMF世界王座を奪取した。現在は母国だけではなく、タイにも頻繁に渡り、試合やトレーニングをしているという。
「正確な数は覚えていないけど、タイでは20戦以上していると思います。タイで練習の拠点としているのは、チェンマイ北部にあるサンタイジムです」
サンタイジムといえば、昨年1月に志朗が劇的な逆転KO勝利を収めたバカイペットが所属するジムとして有名だ。ロペスはバカイペットからも何らかの情報を仕入れて来日することが予想される。案の定、志朗について聞くと、ロペスはよく知っていると答えた。「ユーチューブにアップされている試合も見ました。志朗からチャンピオンベルトを奪うための準備は整っている。もちろん志朗が強いことはわかっています。簡単には勝たせてくれないでしょうけど、闘い甲斐のあるチャンピオンだと思います。この一戦に向け、全てを集中して練習しています」
ロペスは根っからのアスリート。試合がない時にはラクビーに励み、プライベートではボクシング観戦に熱狂しているという。試合映像を見る限り、この男は離れてよし近距離よしのオールラウンドファイター。対戦相手が打ち合いにくれば、それに応じる気の強さも持ち合わせている。
勝負は、ロペスがどれだけ志朗のローキック対策をしてくるかにかかってくるのではないか。志朗のパンチに得意のカウンターを合わせることができれば、おのずと勝機も見えてくるだろう。ふたりの共通項はムエタイのリズムを体の芯で知っているということ。ラウンドごとに試合の流れが目まぐるしく変わるテクニカルな試合展開に期待したい。
TEXT:布施鋼治
志朗チャンピオン写真:早田寛