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ムエタイ入門(36回)

    
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ムエタイ入門(36回)

ムエタイほど浮き沈みの激しい競技は他にないだろう。ギャンブルの対象であるという性質からも、ムエタイの世界でずっと勝ち続けるということは不可能である。連戦連勝してスターダムにのし上がった選手が急に勝てなくなることもある。例えば、去年の暮れ頃までは飛ぶ鳥を落とす勢いであったワンソンチャイ興行のタクシンレック・ギアットニワットは、その後急激に失速し、今に至るまで10戦近く勝ち星に恵まれない状況が続いている。

過去15年間を振り返っても、その時々で騒がれる選手はどんどん変わってきている。タイのスポーツマスコミ協会から年間最優秀選手に選ばれた選手を見ても、2000年度ファースチョン、2001年度トンチャイ、2002年度シンダム、2003年/2004年度アヌワット、2005年度ノーンオー、2006年度ジョームトーン、2007年度ウティデート、2008年度セーンチャイ(2度目)、2009年度ルンルアンレック、2010年度ゴーンサック、2011年度ペンエーク、2012年度ヨードウィチャー・セーンマニー同時受賞、2013年/2014年度パンパヤックという具合にどんどん変わってきており、3度以上このMVP賞を受賞した選手は過去に存在しない。

繰り返しになるが、ムエタイにおいてはあまりに強すぎると試合が組まれにくくなり、組まれたとしても体重ハンデを背負うことを余儀なくされてしまうためである。今更かもしれないが、過去20年間、もし仮にセーンチャイの試合が体重ハンデ無しにポンポン組まれていたとすると、彼がMVPを受賞する機会はもっと増えていたであろうと思われる。

しかし、今となってはそのセーンチャイもタイ国内で試合をすることは殆どなくなっており、ムエタイシーンでは新陳代謝が進んでいる。それでは今のムエタイ界においてどのような選手が人気を集めているのであろうか?

このトピックについては半年ほど前にも一度取り上げさせてもらったが、ちょうど最近、またムエタイ専門誌(ムアイサイアム)の人気コラムにおいて、2015年8月時点のベスト選手というテーマで11名の選手を挙げていたので紹介しよう。ここに名前の挙がっている選手は、いずれも実際にルンピニースタジアムやラジャダムナンスタジアムでバリバリに活躍している選手ばかりである。7チャンネルを筆頭とするテレビマッチを主戦場とする選手は掲載されていないため、メジャースタジアムの現状を反映したかなり的確なランキングになっていると思う。

前回までと同様、今回もファイトマネーに関する記事なので、各選手のファイトマネーの金額も併記する。この金額は直近の戦績や出場する興行によって上下するが、特にワンソンチャイ興行において高額なファイトマネーが出る傾向にあるようだ。なるべく最新のものを掲載したつもりだが、情報が取れなかったものについては過去のファイトマネー額などから推測した。

王者:セーンマニー(ワンソンチャイ):120,000~150,000バーツ(推定)
1. ムアンタイ(ギアペット):100,000~150,000バーツバーツ
2. セクサン(パランマイグループ):140,000~150,000バーツ
3. タノンチャイ(ワンソンチャイ):120,000~150,000バーツ
4. クワンカーオ(ペッティンディー):100,000バーツ
5. ペットウートーン(パランマイグループ):90,000バーツ(推定)
6. プラチャンチャーイ(ワンソンチャイ):110,000バーツ
7. セーン・パランチャイ(ギアペット):70,000バーツ
8. パンパヤック(ギアペット):130,000バーツ~150,000バーツ
9. ペットモラゴット(ペッティンディー):110,000バーツ
10. チューチャルーン(ギアペット):60,000バーツ

なお、パランマイグループとは、ワンソンチャイ系、ペッティンディー系、ギアペット系に続くムエタイ界第4の勢力であり、ソー・ソムマーイ興行の代表者であるソムマーイプロモーターを中心に、チューチャルーンムエタイ興行、バーンラチャン興行、ジャルームアン興行、ペットジャオプラヤー興行、トー・チャイワット興行、トラクンヤーン興行などのプロモーターが名を連ねるラジャ系の新興勢力である。

一部ファイトマネーが10万バーツに達していない選手も含まれているが、とりわけセーンとチューチャルーンに関しては只今赤丸急上昇中であり、次に勝てば一気に10万バーツに手が届くのではないかとも言われている。

もちろん、メジャースタジアムの人気選手は上記の選手ばかりではない。情報の入手できた主要選手の最新のファイトマネーを紹介しよう。(多少の誤差はあるかと思うが、どうかご容赦頂きたい。)

サームエー(ペッティンディー):130,000バーツ
スーパーレック(ペッティンディー):90,000バーツ
パークカーレック(ワンソンチャイ):90,000バーツ
ピチットチャイ(ワンソンチャイ):85,000バーツ
タクシンレック(ワンソンチャイ):85,000バーツ
ケングラー・ポー・ペッコー:80,000バーツ
ワンチャローン・PKセーンチャイムエタイジム:80,000バーツ
ジョームピチット(パランマイグループ):80,000バーツ
チャムアックトーン(ギアペット):80,000バーツ
ヨードパノムルン(ギアペット):75,000バーツ
ポーゲーオ・フォンジャーンチョンブリー:70,000バーツ
ロットレック(ギアペット):70,000バーツ
ペットラムシン(ワンソンチャイ):70,000バーツ
ソーンコム・ナーヨックサンヤー:65,000バーツ
ジェームサック・サックブリラム:60,000バーツ
ケンガート・ポー・ペッコー:60,000バーツ
パランポン(ペッティンディー):60,000バーツ
ディーサイン(ギアペット):60,000バーツ
ウィラチャイ・ウォー・ウィワタナノン:60,000バーツ
ヤートファー・アールエアライン:60,000バーツ
ギンサーンレック(ワンソンチャイ):55,000バーツ
ペットモラゴット・ティーデート99:55,000バーツ

=続く=

171-1

写真:タクシンレック・シットニワット(2014年前半にラムナムムーンと2回対戦しているが、当時のファイトマネーは4万~5万バーツであった。ここから、次のセーンマニー戦との2連戦では6.5万バーツ、スーパーレック戦で8.5万バーツ、サームエー戦で10万バーツと増え続け、同年11月、12月に行われたスーパーバンクとの2連戦では11万バーツまで高騰したが、以降今日に至るまでの戦績は9戦8敗1分と散々であり、ファイトマネーも8.5万バーツまで減ってしまっている。まあ、それでも戦績に比べて減り幅がそれほど大きくないのは試合内容が悪く無いからであろう。まだ20歳になったばかりなのでこれからの返り咲きに期待が持てる。)

記事・写真/徳重信三

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