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ムエタイ入門(34回)

    
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ムエタイ入門(34回)

ルンピニースタジアムがバンコクの郊外に移転して以降、二大スタジアムの収入が逆転するという現象が起きているという話の続きをしよう。

日本とは違い、タイは非常にオープンな国である。例えば、ムエタイの選手たちは、自分がどれだけの貯金や財産を持っているのかということを、聞いているこちらが恥ずかしくなるくらい赤裸々に語る。銀行に幾ら貯金があり、何グラム分の金塊を持っており、バイクを何台持っていて、田舎にはどれだけの土地や牛を持っているといった類の話をベラベラと話す。また、各選手のファイトマネーの金額も公開されることが多いし、そして各スタジアムの興行収入の金額までリアルタイムで記事になるのだ。

折角なのでこの機会に最近の2大スタジアムにおける平日興行の収入を並べてみよう。

6月16日(火)ルンピニースタジアム/ペットスパーパン興行
34万バーツ(外国人:68人)

6月17日(水)ラジャダムナンスタジアム/チューチャルーンムエタイ興行
62万バーツ(外国人:116人)

6月18日(木)ラジャダムナンスタジアム/バーンラチャン興行
64万バーツ(外国人:108人)

6月19日(金)ルンピニースタジアム/セーンモラゴット興行
54万バーツ(外国人:80人)

スター選手が集まる大規模興行を除くと、基本的に外国人料金(1階席)は2,000バーツであり、タイ人料金は平均的に250バーツ(3階席)、500バーツ(2階席)である。また上記興行収入は、両スタジアムにおけるここ最近の典型的な収入だと言って良いだろう。従い、ざっと見積もってルンピニースタジアムのタイ人客の数は平均的に750人程度、ラジャダムナンスタジアムのタイ人客の数は1200人程度ということになるのではないかと思う。

やはり数年前と比べると完全に両スタジアムの立場が逆転した格好である。とりわけ外国人観光客の中には旅の思い出づくりにムエタイ観戦をと考える人も多く、この手の人達にとっては、どのような選手が出場するかは大した問題ではなく、バンコク中心部から離れた新しいルンピニースタジアムまで足を運ぶより、近場のラジャダムナンスタジアムに行こうと考えるのは極自然のことであろう。また新ルンピニースタジアムは交通の便もあまり良くないため、よほど興味深い試合が組まれない限りタイ人客も敬遠する傾向にあるようだ。

前回も多少触れたが、この影響を最も受けているのは、ペットルンピニーとも呼ばれるペッティンディー勢力であろう。同勢力はラジャダムナンスタジアムにおいてもペットウィセート興行やワンミットナコン興行などを手がけているものの、やはりその中心はルンピニースタジアムにある。ルンピニースタジアムでの集客が思い通りにならないということは、コストの高いビッグマッチが組みにくくなっているということである。

もしかしたら今後ムエタイ業界の勢力図が大きく塗り替えられ、これまで以上にラジャ系の興行が勢いを持つようになるのではないだろうと、そんなことを考えていた矢先、つい最近のことだが、ペッティンディー系のミットナコンがムエタイ専門誌を通じて次のような声明を発表した。

1)
ペッティンディー興行代表のシアナオは現在プロモーター業から手を引く準備をしている段階であり、今後は所属/傘下選手を全て息子のシアボート(ペットウィセート興行代表)とミットナコン(ワンミットナコン興行代表)に譲り渡すことになる。

2)
一方、ペッティンディー興行では1,000万バーツを用意して自勢力およびムエタイ業界全体の活性化を図る。このプロモーション活動には以下が含まれる。

a)タイ全土から有望ジム/選手を募り、お抱えの選手/ジムを増強
b)傘下選手のファイトマネーをつり上げる

やはり、低迷したこの状況を打破するためには資金が必要ということであろうが、ペッティンディーには、タイ有数のコングロマリットであるCPグループの幹部(ポン・ウィセートパイトゥーン氏)も付いており、まだまだ資金力は盤石ということなのだろう。今後の巻き返しが期待される。

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=続く=
文/徳重信三

写真:ミットナコン(本名:スメート・スーサットボンゴット氏)とシアボート(本名:ナタデート・ワチララタナウォン氏)
Photo Credit: Siamsport

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